2007年05月10日

ANGELICA 第1話

アラバスタ・シティ。
ここ白の大陸において、唯一他大陸住人の出入りが許された都市。
様々な種族の人々の入り乱れる、華やかな街である。
しかしそれは、同時に犯罪が絶えぬ街でもあるということ。
白の大陸は青の大陸を除いた他大陸に比べて、遥かに豊かだ。
それゆえ、犯罪率の高さは必然的と言えるだろう。
俺は今、そのアラバスタ・シティのとあるビルの前にいる。
バードマンの集団が幼い天使様を人質に立て篭り、身代金を要求していやがるのだ。
そして俺はその犯人を捕まえんとする、パラディンの新米デカと言うわけだ。


「ANGELICA」


「君達は完全に包囲されている!!大人しく人質を解放し、投降したまえ!!」

俺の上司である警部がお決まりの台詞をスピーカーに向かって叫ぶ。そんな脅しで言う通りにしてくれれば苦労などしないというものだ。
案の定犯人はこちらの指示に従うそぶりは毛ほども見せない。
こりゃ帰れないな、と腹をくくっていると、警部がポツリと呟いた。

「アンジェリカにやってもらうしかない、か」
「へ?アンジェリカ?」

アンジェリカを呼べと部下(俺の先輩である)に命令する警部に思わず聞き返すと、
警部は「呆れた」と言わんばかりに表情を歪め、溜め息混じりに説明を始めた。

「アンジェリカってのはこういう事件専門の、シングルナンバー・エンジェル直属のエージェントのことだ。凄腕で通ってる」
「シングルナンバー・エンジェル直属!!そりゃ凄い!!アンジェリカってことは女ですよね?ということはワルキューレかぁ、きっとTHE・ガッツみたいにゴッツイ奴なんでしょうね」
「いや……なんでも天使様って噂だ」
「へ、天使様!?」

俺が驚嘆の声を上げると同時に、黒塗りの車が隣に停まり六人の天使様達が降りてきた。
ウホッ、いい女。

「お待ちしておりました、ジャッジメント様」

警部が深々と頭を下げる。

「ジャ、ジャッジメント様!?すげぇ、初めて見た!!」
「馬鹿野郎、おめぇも頭を下げねぇか!!」

あ、そうかって、痛い、痛いっすよ警部。
それにしてもジャッジメント様が直々に現場に来て下さるとは。
ジャッジメント様と言えば、白の大陸に知らぬ者の無いスーパーエンジェルじゃん。
ブロンドの流れるような長髪と、近寄りがたいほどの美貌を持つ、
白の大陸を実質統治しているシングルナンバー・エンジェル。
それがジャッジメント・エンジェル様だ。
それに比べて警部はブッサイクだなぁ〜。オッサンだし。
マザーがデザインしたものとは思えん。
なるほど、この人がアンジェリカのボスか。

「かまいませんよ。それよりもお仕事の話を」
「はい、犯人グループは二十人、人質は一人です。犯人グループは一千万ドルの身代金を要求しています」

うーん、声もまたお美しい。
つーかそんなに要求してやがったのか鳥野郎共。
飴塗ってじっくり焼くぞ。

「わかりました。ホワイトヒート」
「問題無し。チョロイ仕事だ」

セミロングの綺麗な髪の姉御肌っぽい細目美人の天使様が欠伸をしながら答える。
つーかチョロイってマジかよ。

「しかし驚きました……噂には聞いていましたが、よもやアンジェリカが本当に天使様とは」
「まぁ驚かれるのも無理はないでしょうね。それよりホワイトヒート、作戦説明を」
「作戦も糞もないっしょ。ライトに人質救出させて、あとは皆で突撃すりゃいいんじゃないの?」

んなアバウトな。

「ふむ、ではそれで行きましょう。スターライト!!」
「イエッサー」

マジかよ。
スターライトと呼ばれたツインテールの妹系なのにスイーツな胸を持つ天使様は、
なんの躊躇も無く単身でビルへと歩いていった。
あたかも
「ちょっと雑誌立ち読みにコンビニ行ってくる」
みたいな軽いノリで。

「ちょ、天使様一人で大丈夫なんスか!?これじゃ人質がもう一人増えるだけっスよ!!」
「アハハ、大丈夫っスよー」

ロングヘアーのあどけなさの残るロリ美少女天使様が、
俺の極めて常識的かつ人道的なツッコミを適当に流す。

「いやいやいやお言葉ですけど、都市の貴殿方天使様達はただのか弱い仔猫ちゃんに過ぎません!!危険過ぎますよ!!」
「誰が仔猫ちゃんか」

間発入れずロングヘアーロリ天使様にツッコまれるが、ここは譲れない。
何故なら俺は正義の味方に憧れて警察になったからだ。スマン、嘘だ。

「ピース、ここは私が」

黙って俺達のやり取りを聞いていた、綾波レイちゃんみたいな天使様が聞いちゃおれんと口を挟む。

「彼女ほど今回の任務に適した人材は有り得ません。仮にもライトはアンジェリカなのですから、心配はご無用です」
「え、じゃああの天使様がアンジェリカなんですか!?あんなヒョロイのに!?」
「いやそれは──」
「なーにやってる!!アポ、ライトから連絡来たぞ、突撃だ!!」
「あ、はい。すみません、話は後ほど」

あ、そっすか。
そんなわけで、俺らと天使様五人、その他オマケ共はビルへと突撃した。
俺はA班とのことだが、そんなことは知らん。ムサイ男共より、良い匂いのする美少女達だ。

「ちょっとホワヒ様、警察の人が一人ついてきてますよ?」
「ほっとけ、サウ」

そんな会話をしながら、階段を登ろうとしたときだった。
ピンを抜かれたハンドグレネードが4つ、階段の上から転がってきた。

「やば──」

──ドン!!

凄まじい轟音と火薬の臭い、そして巻き上げられた埃が俺らを包む。
こりゃ死んだな……グッバイ、まだ見ぬ未来の嫁。

「なに安らかな顔してんですか」
「へ?」

恐る恐る目を開くと、黒い壁が丁度ハンドグレネードの爆風から俺らを守るようにそびえ立っていた。
なんじゃこりゃ。

「カスめ」

細目美人の天使様が、ハンドグレネードが転がってきた辺りに手を伸ばし、パチンと指を鳴らす。

──ゴウン!!

熱風。炎が上がりやがった。

「行くぞ」

俺は半ば夢でも見てるような気分で、天使様達に続いて階段をかけ登る。
あ、鳥の丸焼き2つめっけ。
こりゃあおっかないね。

「こりゃどういうことです?」

綾波似の天使様に問いかける。

「あなたは先程、私達天使を都市ではただの仔猫ちゃんと言いましたね?」

うん、言った。
ちなみに質問文に対し質問文で答えてもテスト0点ですぜ、天使様。

「それは何故です?」

そりゃあ、マザーが能力の使用を制限してるからっスよ。
マザーの許可がない限り、レベル3まであるリミッターがかかって能力を行使できないんだな、うん。

「つまりマザーの許可さえあれば、リミッターを外せるということです。我々アンジェリカはレベル1、場合によってはレベル2までリミッターを外せます」
「な、我々アンジェリカって、アンジェリカはシングルナンバー・エンジェル直属のエージェントの名前でしょう!?」
「それはただの噂です。アンジェリカは個人名ではありません。部隊名です」
「な……」

あんの糞警部、ハッタリこきやがったな。

「さっきの黒い盾はピースキーパーの能力です。彼女は炭素を精製、操作することができます」
「へあ?」
「頭悪いですね。炭素は結合の度合いによっては凄まじい硬度を誇ります。彼女はそれを盾として使用するわけです」

よくわかんないけど、専守防衛ってワケね。

「さっきの炎はホワイトヒート先輩の。彼女の能力は火を発生させることと、酸素を操る事。レベル1ではライター程度の火しか起こせませんが、酸素濃度を調整すればご覧の通りです」

歩く火炎放射器ってわけやね。

「ところで、なんでレベル2までなんです?」
「レベル3、つまりリミッターを全開放してしまうと、最悪アラバスタ・シティが地図から消えることになりますから」

ザクグフゲルググ。

「そして今は既に外に脱出しているでしょうが……人質を救出に乗り込んだ天使を覚えていますね?」

ああ、あの現在「俺的お兄ちゃんって呼ばせたい天使様ランキング」ぶっちぎり1位の、ツインテールっ娘ッスね。

「彼女はスターライト。極小のナノマシンを散布し、それで光の屈折率を調整することによって自分の姿を消す事ができます」

今度はステルス迷彩かよ。なんでもアリだな。

「そりゃ人質1人くらい、楽勝で救出できるわけですね。ちぃ覚えた☆」
「気持ち悪いので止めて下さい・・・・・・っと」

ガガガガガガッ!!

廊下の角からマシンガン乱射してくるアホ共はっけーん。
ピースキーパー様がすかさず盾を作り、弾丸の雨を防ぐ。

「そして、これが私の能力です」

チカッ。
────キュゴゥ!!!!

綾波似の天使様の手から極太の光線だかビームだかレーザーだかが放たれ、
マシンガンを持ってたバードマン達を一瞬で蒸発させる。
なんか壁とか吹っ飛んでるけど、このビル平気かなぁ。

「えと・・・・・・ビームライフルですか?」
「荷電粒子砲です。燃費が悪く連射は出来ませんが、単純な火力でならアンジェリカでも随一です。移動砲台。これが私の役割です」

ガンダムじゃなくてゾイドだったか。

「サウ、今何羽いた?」
「8羽です。ライトが人質救出の際3羽殺ったので、あと7羽ですね。近いですよ、そこの部屋です」
「アポ、もう一発イケる?」
「問題ありません」

────キュゴゥ!!!!


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「こんの大馬鹿もんがッ!!自分の持ち場離れて何やってた!?ちっとばかし腕に自身があるからって調子乗ってんじゃねぇぞ、このおのぼりさんが!!」
「ちっとばかしチガウ、ワタシ聖騎士道場でナンバーワン、戦闘学課はミンナミンナナンバーワンだったデスネ」
「何人だアホ!!もういい、減給だ減給!!始末書も書いてもらうからな!!」

うーわ、怒りのボルテージMAXだな。まぁいいか。

「それより警部、渡したいモンが・・・・・・・・・・・・」


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「で、辞表を出してきたのでアンジェリカで雇ってくれと」
「イエスアイアム。雑務から戦闘までなんでもこなしますよん」

やっぱ可愛い女の子がいる職場の方がイイよね。ハーレムって男の浪漫だよな?

「確かに、戦闘面では問題無い・・・・・・いや、他のパラディンと比べても頭一つ飛び抜けているようですが・・・・・・」
「警察でも、自分勝手な行動さえしなければ超優秀でした。エッヘン」
「いや、そこは自重してくださいよ。まぁ・・・・・・色々と役に立つかもしれませんし・・・・・・分かりました、明日からウチに来てください」

おっしゃあ!!

「ところで、あなた名前は?」
「よくぞ聞いてくれました。我が名はホーリー・ランサー。愛の戦士です」














































































というわけで小説書いてみまんた☆
僕は小説を書かせるとどうしても文がくどくなってしまうので、
出来る限り読みやすい文章を心がけてみました。どうでしょう?
これはちゃんと真面目に書くつもりなんで、安心して下さいね。

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2007年03月22日

黙示録の日まで15

ジャッジメント様が、ホワイトヒート様の死体に取りすがり泣き叫ぶ。
なぁんだ、そういうことか。

ああ、ホワイトヒート様は、ジャッジメント様のものだったんだ。


──カッ!!

刹那、天空が眩い光に覆われた。

「ああ……」

そこには凄まじいイケメンが浮かんでいた。

「我が名は聖王Albidum!!皆、剣を収めよ!!」

そこから先は凄かった。
聖王はその名の通り神のような力を発揮して戦争を終結させ、
破壊されたものとか死んだ人も元通りに再生し、ホワイトヒート様も純天使として生き返った。
聖王あるのおかげで世界は平和を取り戻し、今私は結婚式場にいる。
「おめでとう」という祝いの言葉が式場を埋めつくし、あるとアポ先輩が誓いのキスを交わす。
ありがとう、ある。あなたのおかげで、世界は平和を取り戻しました!!

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「う……ん、夢か……」

なんだか素敵な夢を見た。よく覚えていないが、みんな笑って、楽しそうな……。

「なんだ寝てやがったのか」

体格のいい大柄な男が、股間を反り立たせて部屋に入ってくる。
俺は今日もこの男に犯されるのか……。
一体いつからこうしているのだろう。
妹を人質にとられ、俺は全裸でこの部屋に監禁され、毎日この男に犯されている。
食事は汚物のようなグチャグチャの肉片。

「妹を……妹を解放してやってくれ……」

男はニヤニヤと嫌な笑みを浮かべ、俺の前に今日の分の食事を置く。また肉か……。

「まずはそれを食え。そしたら何時ものように犯してやる。今日一日耐えたら、お前も妹も解放してやる」
「ほん、とうだな……?」

俺は飯を食い体力を温存すると、またこの変態にケツを掘られる。

「うっ……!!」

男がくぐもったうめき声をあげると、俺の直腸に白い欲望をぶちまける。気色悪い……。

「約束だ、妹を……」
「ああ、あいつなら今さっき無くなっちまったよ」
「え……?」

言ってる意味が、わからない。

「お前が食ったから無くなったんだろ?さっきも旨そうに食ってたろうが。あれで最後」
「う、うぇぇぇぇ……!!」

俺は吐いた。男は相変わらずニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。

「約束なんて守るわけねーだろ?さ、体も汚れてきたろう。風呂に入ろう」

俺はその日も、朝まで犯された。ああ、何もかも壊れてしまえ。
あと少しで神様が降りてきて、こいつみたいな奴のいない、安らかな世界を作って下さる。
だから今は耐えよう。

そう、黙示録の日まで────。

そして俺は考えることを止めた。

──FIN


あ☆と☆が☆き
こんにちは、あるです。
この作品は、私がこのオチを書きたいがために執筆していたものでした。
普通に楽しんで下さってた人たち、サーセンwwwwwwwwwwwwwwww
もしかしたらそのうち、ちゃんとした続き書くかもです。
まぁ、気が向いたらだけど。
ニックネーム ある at 03:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

黙示録の日まで14

大抵の物質がそうであるように、空気もまた、圧縮することで熱を発する。
私の手によって数立方cmにまで圧縮された超高温の酸素はプラズマ球を形成する。

「死ねぇぇぇぇ!!」

──キュゴウ!!

圧縮空気によって打ち出された無数のプラズマ球がジャッジメントを襲う。
ジャッジメントはそれを寸前で回避するが、その隙に私は追撃の用意を終える。
ぐにゃり。ジャッジメントを中心とした半径10mほどの空間が歪む。
膨大な量の酸素が、ジャッジメントの周囲に集まる。
私がパチンと指を鳴らすと火花が生じ、大量に圧縮した酸素は一気に燃焼する。

──ドウンッ!!

私は攻撃の手を休めない。
極低周派を圧縮空気で反響させることで指向性を持たせ、爆炎の中央にそれを放つ。
サウンドマスターを模倣した、音の槍である。

「ジャッジメント様!!」

ハッ、一体アレの何を心配すると言うのだ。
ジャッジメント・エンジェルは白の大陸を担うため作り出された、究極の天使だ。
他のシングルナンバー8人を押し退けその頂点に立った、シングルナンバー最強の天使だ。
この程度でくたばるものか。
案の定、爆炎の中から無数の光線が放たれる。

「聖骸布よ!!」

透き通った金色の布が宙を舞う。
聖骸布。
エネルギーと魔力に反応する特殊な金属の糸で以って編まれた、魔導科学の結晶である。
私によってエネルギーと魔力を込められた聖骸布は光を発し、ジャッジメントの放った光線を弾く。

「聖骸布……宝物庫に安置された聖遺物!?」

サウンドマスターが信じられない物を見たかのような表情で叫ぶ。それもそのはず、聖遺物なんてものは古代戦争で数々の文明を消し去った決戦兵器。
マザーの許可無くしてはシングルナンバー・エンジェルでもでもお目にかかれない代物だ。

「案外簡単だったよ、あのライオンの電脳にハッキングかけてパスワードを抜き取り、ついでにスリープモードにしてやっただけさ」

やがて炎の中から、ジャッジメントが歩いてくる。

──ゾクリ。

一片の迷いもない、冷たい表情。
ただ目の前の敵を滅ぼさんとする、容赦なき瞳。
渦巻く炎を纏うその壮絶なまでの美しさに、私は戦慄を覚える。

「流石に丈夫だな。え?」

ジャッジメントは私の言葉を無視し、無数の“釘”を展開する。
それら一つ一つは宙に浮き、不規則に動き回る。

「聖釘か……」

聖釘“エレナ”。単騎対多数戦闘を想定して作られた、聖遺物の一つである。
成程、さっきの光線はこれによるものか。
釘は目にもとまらぬ速さで飛び回り、私の死角から光線を放つ。
その全てが必殺の威力を持って、私に襲いかかる。

「聖骸布!!」

まさに防戦一方。聖骸布のお陰で辛うじて致命傷は避けているが、長くはもつまい。
天使としてのスペックが、ハナから段違いなのだ。
そう、こうなることは初めから分かっていた。
ゲームのボスキャラのように、都合よく弱点など設定されていない徹底された暴力。
私がジャッジメントを打倒できる可能性など、万に一つもありはしないのだ。
私は、ジャッジメントには勝てない。
そう、全ては計画通り。

──バチィッ!!

聖骸布が弾け、私の手から離れる。どうやら、私には聖骸布を制御仕切れないらしい。
だが“起動させることはできる”。それは聖骸布で確かめさせてもらった。
ならば使いこなせなくとも、使うことはできるはず。私は宙に手を伸ばす。

──ギュラ…ギュラ…。

空間が捻れ、私の手には一本の槍が握られていた。

「“ロンギヌス”……無駄です、あなたにそれは御しきれない」
「ほざけ」

聖遺物“ロンギヌス”。
伝説に残る“神殺しの槍”を模して作られ、聖王を封印するため使用された究極の対神兵器。
天使にとって、これほど驚異となる兵器は存在しない。
私はロンギヌスを握る手に力を込め、ジャッジメントに突進する。
エレナによる光線がそれを阻もうとするが、
ロンギヌスから発せられる禍々しいオーラが、それを全てそらしてしまう。

──ギュオッ!!

目にもとまらぬ刺突。吸血鬼の圧倒的身体能力で以って放たれたそれは、ジャッジメントの心臓へ押し迫る。

ピタリ。

「な──」

信じられないことが起きた。
矛先が僅かにジャッジメントの胸に触れた状態で止まっている。
どんなに力を込めても、矛先は少しも前に進まない。いや、体が動かないのだ。

「まさか……“割り込んだのか”!!
矛先が触れた瞬間、槍にアクセスして強制終了させ……挙句、私にハッキングまでしたっていうのか!?」

ジャッジメントは答えない。エレナが私の周囲を取り囲む。
やっぱり強いな。ロンギヌスを回避しなかった時はどうしようと思ったが、信じて槍で突いて良かった。
計画は完了。あとは私が私になるだけ。

「どうした、ジャッジメント。さっさと止めを刺せ。さっきの顔はどうした、迷うな。感傷にかられたか?」
「あなたは……あなたは馬鹿です……!!私が気付かないとでも思ってるんですか!!」

ジャッジメントが声を荒げる。ああ、やっぱこの人には隠し事できないなぁ。

「ジャッジメント様、何言って……」
「裏切りなど嘘です!!あなたは現在、裏から黒の大陸を支配していると聞きました……どうせ私に自分を殺させて、手柄の一つでも立てさせようとしているんでしょう!!司令塔を失えば、攻め落とすのは容易でしょうからね」
「な……」

なんで昔っから、この人にだけは嘘がバレんのかなぁ。

「なんだ、お見通しか……」
「あなたの下手な芝居など……通用しません……!!」
「じゃあ話は簡単だ。あとはジャジ姉が私を殺すだけ。黒の大陸を落とせば、赤の戦力も半減だ。白の勝利だよ」
「な……なに言ってるんですか、ホワイトヒート様……別に死ぬことはないでしょう?
一緒に帰りましょう!白の大陸に勝利をもたらした英雄として歓迎されますよ!」
「それはないね。知ってるだろう?私が呪われた天使と呼ばれていること。
そいつが吸血鬼になって帰ってきてごらん?誰も受け入れない。
異端裁判にかけられて死刑だ。国家反逆罪の売国奴としてね」

呪われた天使。生まれたときから、そう蔑まれてきた。

「何故こんなことを……こんなことして、私が喜ぶとでも!?余計なお世話です……!!」
「それは違うよ」

ああ、やっぱこいつら勘違いしてたか。

「これは私のためにやったことだよ。ジャジ姉のためじゃあない。
なぁ、ジャジ姉。私はいつだってジャジ姉のために何かをしてきた。
ジャジ姉が今の地位にいるのも、私のおかげだしね。あ、これ私の自慢なんだ」
「何を……」
「ジャジ姉は私の居場所だったんだ。ジャジ姉がいなきゃ、一歩も前に進めなかった。
だから……だからこそ私が、吸血鬼なんかに……無能な天使達に殺されるなんて耐えられなかった」

みんな──

「死ぬならジャジ姉の手でだ。ゴメンな、嫌な役押し付けて。
私はジャッジメント・エンジェルに生き、ジャッジメント・エンジェルに死にたいんだ。頼むよ、ジャジ姉」

──楽しかったよなぁ。

「その為だけに、私は吸血鬼にまでなってここにいるんだ。
…………ジャジ姉の手で、愚かな私を連れ戻してよ」
「わかり、ました……。」
「ジャッジメント様……」

エレナが私のこめかみにつきつけられる。

「大好きですよ、ホワイトヒート」
「ありがとう、私もだよ」

──さようなら、いとしき歳月よ
ニックネーム ある at 03:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

黙示録の日まで13

「そんな……ホワイトヒート様が!?」
「ええ、彼女は生きています。ホワイトヒートは現在、吸血鬼にさせられ、敵の手の内です。
ホワイトヒートを救出すべく、これよりマスプロデュース部隊を率いて黒の大陸に打って出ます。
一緒に来なさい、サウンドマスター」

白一色の病室。
サウンドマスターはベッドの上で上体を起こし、ジャッジメントの話を聞いていた。
内容は俄には信じがたく、サウンドマスターは相槌を打つのが精一杯だ。

「あなたは黙示録部隊唯一の生き残り……そして黙示録部隊に参加していたのは何のためですか?ホワイトヒートの仇を討つためでしょう。もう一度、ホワイトヒートのためにヴェンデルカノンを駆りなさい」

実際奇跡的にも軽傷を負うのみで済んだサウンドマスターの体調は既に万全である。
その気になれば、今すぐにでも戦場に舞い戻れるだろう。
ジャッジメントの要求に対する返答は、もちろんイエスである。
しかし、一つ気掛かりがあった。
サウンドマスターは、どうしてもジャッジメントに質問せざるを得なかった。

「ジャッジメント様……ホワイトヒート様は、敵に無理矢理捕われているんですよね……?」
「?そうですが」
「あの……!!その、ジャッジメント様は……
1%でもホワイトヒート様は捕われているんじゃなくて……白の大陸を裏切ったんじゃないかって気持ちはありませんか?」
「……」
「正直言って、私にはあります……
だってホワイトヒート様を吸血鬼にしてまで生かしておくメリットってなんです?
情報を引き出したら、もう用済みのはずです」
「サウンドマスター……」
「い、いえ、もちろん断言してるわけじゃありません!!
そう、ほんの
3%くらい……“もしそうだったらどうしよう”って……怖いんです、私……」
「わかっています。それが普通の考えでしょう。
3%と言わず、50%そう思っても、なんら不思議ではありません」
「じゃあ……ジャッジメント様は……」
「ありません。0.1%も。あの娘のことは私が誰よりも知ってます。
あの娘は裏切ったりは絶対にしません。安心なさい、サウンドマスター」

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「会いたかったよ、ジャジ姉」

見渡す限りの屍。
それらは皆同じ顔をしている。マスプロデュース・エンジェルと呼ばれる、量産型遠距離支援用天使である。

「ホワイトヒート……奴らに何を……」
「何を?」

ジャッジメントの問いに、ホワイトヒーがゆっくりと答える。

「別に、なにも。私は自分の意思で裏切り、ジャジ姉の率いる部隊を全滅させた。それだけさ」
「ホワイトヒート……」
「うざったかったんだよ、アンタ。
シングルナンバー・エンジェルだからっていい気になりやがって。
そんだけ偉けりゃ、他人に優しくも出来るわな?人を上から哀れんだ目で見やがって……何様だテメェ」
「もうやめて!!」

サウンドマスターが叫んだ。
サウンドマスターだったは無数の円盤をホワイトヒートに向け、エネルギーを込める。
ホワイトヒートは愉快そうに笑うと、サウンドマスターに掌を向ける。
すると、途端に周囲が静まりかえる。

「な……どうして……音が出ない……!?」
「バーカ。お前の出す極低周の音に、同程度の極高周の音をぶつけたんだよ。
(+1)+(-1)=0だ。簡単な算数のお勉強だろうが。お前はそこで大人しくしてろや」

ホワイトヒートはそう言うと、呆然とするジャッジメントに向き直る。

「どうよ?今までは机上の空論でしかなかったことが、吸血鬼の力さえあれば可能なんだぜ!?
天使の莫大なエネルギーと吸血鬼の圧倒的魔力、そして私の頭脳!!
私はもう何でも出来る、最高の気分さ!!」
「あなたは……それほどまでして力が欲しかったのですか……!!」
「ああ、そうさ」
ホワイトヒートはジャッジメントの問いに即答すると、ジャッジメントを睨みつける。
「アンタには分からないだろうよ。
生まれたときから強者であることを約束されたアンタには、私の気持ちなんて分かるはずがねぇ。
どんな気持ちだと思う!?製造ナンバー666、獣の数字を冠した呪われた天使に!!
どういうわけかシングルナンバー・エンジェル様があれこれいらねぇ世話を焼いてくれるこの気持ち!!
最っ……高に惨めだったぜ。なんだってんだ!?私とアンタの何が違うってんだ!!
実力なら他のカス共に負けたりしねぇんだ!!
敷かれたレールの上を歩いてるだけの無能共なんかにゃあ絶対負けねぇ!!アンタにだって!!」
「…………」
「だから裏切ってやった!!見返してやるんだ、私を忌み子と、呪われた天使と呼んだカス共を!!
黒の大陸を牛耳り、白の大陸をぶっ潰してなあ!!」

額に脂汗が滲むほど絶叫したホワイトヒートは呼吸を整えると、静かに、しかしハッキリと宣言した。

「そのためにはジャッジメント、アンタが邪魔だ。やろうぜ。
私は過去と決別し、アンタに宣戦を布告する。アンタを殺して、私は本当の私になるんだ」
「ホワイトヒート…………」

ジャッジメントは一瞬寂しそうな顔をすると、ホワイトヒートを鋭く睨みつける。

「いいでしょう。もはや情けは無用、一切の手加減はしません。
裁きの天使の名のもとに、ホワイトヒート、あなたを断罪します」
ニックネーム ある at 03:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月21日

黙示録の日まで

「そんな……馬鹿な」

ジャッジメント・エンジェルはマザーの報告を受け、愕然とした。

ホワイトヒートが、生きている。

いや、便宜上「生きている」という単語を用いたが、それは間違いだろう。
彼女は吸血鬼になった。つまりアンデット、生ける屍というわけだ。

「彼女は吸血鬼となり、黒の大陸を裏で操作しています。
それが自由意思によるものなのか洗脳によるものなのかは判断が付きかねますが、
もはや彼女は倒すべき敵というわけです」

敵──違う、ホワイトヒートは敵などでは断じて無い。
無理矢理に吸血鬼にさせられ、汚らわしいヴァンパイアに操られているだけだ。
そうに決まっている。

「マザー、黒の大陸を襲撃する許可を」
「勝算は?」
「私はシングルナンバー・エンジェルにして、最強の天使です。あなたが“そう”作った。違いますか?」

マザーは忌々しいといった表情──もっとも顔があればだが──を作り、
ジャッジメント・エンジェルに「好きになさい」と命じる。
忌々しい、天使達。先日再教育を施した天使もそうだ。
何故思い通りにならない?
マザーはいよいよ“アレ”を解き放たねばならないと、心中舌打ちをする。

「ジェネシス」
「は、御前に」

表情の無い天使が、マザーの前に跪く。
例の再教育を施されたシングルナンバー・エンジェル、ジェネシス・エンジェルである。

「“聖王”の解凍処理を命ずる。不休で臨みなさい」
「は、かしこまりました」

天使、天使、天使。
くだらない、不完全な木偶人形。もうあんなものに頼るのはやめだ。
天使などに任せていては、いつまでたっても息子の制作に取り掛かれない。
せいぜい踊るがいい。最後に笑うのはこの全知全能の神、マザー・パレスだ。

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「メディア、白の大陸がいよいよ動いたぞ」

ラインハルトは諜報部隊の報告を受け、彼等が撮ってきた写真をメディアに渡す。

「……ジャッジメント・エンジェル…………そうか、やっと……」

ラインハルトはワイングラスを傾け、数拍置いて口を開く。

「それにしても急だな。何故今なのだ?」
「気付いたのさ。私が寝返ったことにね」

メディアは微笑を携え言葉を続ける。

「あの人らしいよ。ラインハルト、こいつらは私がやる。手を出すなよ」
「な、正気か!?相手はなんたらナンバーとかいう凄そうな天使が率いる大隊だぞ!?それに……お前の……」
「私の、なんだ?もはや私達は志を違えた。敵だよ、ラインハルト。
大丈夫、白の対処法は熟知してる。私にしかできない。」

それに──と、メディアが呟く。

「全ては計画通りだ。これでやっと、私は私になれる」

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ここは寒い。怖い。寂しい。
アポカリプス・エンジェルは痛む体を抱え、息を潜める。
敵の策にまんまとハマってしまった。
突如として吹き荒れた砂嵐、膨大な酸素を喰らい顕現した、仮面をした何か。
アポカリプス・エンジェルがこうして生き延びることができたのは、まさしく奇跡であった。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

あのコロボックルの少年が、瞼に焼き付いて離れない。
自分も、あんな目をしていたのだろうか。
アポカリプス・エンジェルは恐ろしくなり、体を抱く手に一層力を込め蹲る。

「天使?」

そんなときだった、声をかけられたのは。

「ヒッ」

声の方向を向くと、ボロボロになった機械の破壊鎚を引きずったコロボックルの少女が立っていた。
──見覚えがある。確か、私が殺してしまった“あの人”の……。

「ご、ごめんなさい、ごめんなさい……私、知らなくて、それで……」
「……やめてよ」

コロボックルの少女──トゥペケンヌペ──は怒りとも悲しみとも取れる表情で、アポカリプス・エンジェルの言葉を遮る。

「なんで泣いたりするのよ!?天使のくせに!!それじゃあまるで・・・・」

トゥペケンヌペはビクビクと怯えた様子で謝り続ける天使を見て、涙を流した。

私にこの人は、殺せない。

































もうちょい・・・・。
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2007年02月01日

黙示録の日まで12

アポカリプス・エンジェルのユニット、ハル=メギドは、
大火力による敵兵の一掃を想定した単機対多数戦闘用ユニットだ。
対してサウンドマスター・エンジェルのユニット、ヴェンデルカノンは、音による近・中距離における防衛と攻撃を想定した迎撃用ユニットである。
だとすれば、これほど相性の良いコンビもあるまい。
事実この二人の天使は、千の兵を前にして鬼神の如き力を発揮していた。

──キュゴウ!!

友軍が上空から誘導した敵にめがけ、砲撃一発。
高熱を伴った強力な光線は一度に多数の敵を捕え、
いとも簡単にその命を刈り取ってゆく。
そして充電のため生まれてしまう必然的な間。
致命的な隙である。当然敵は次弾の発射を許すはずもなく、
アポカリプス・エンジェルの不得手とする近距離に踏み込み、彼女を撃ち取ろうとする。
しかし、その行為は默示録の天使の領域を侵すと同時に、
もう一人の天使の間合いに踏み込むことを意味する。

──ガウンッ!!

音匠の天使の間合いに踏み込んでしまった以上、彼等に文字通り“音速”を誇る振動の波をかわす術は無い。
馬鹿げた周波数を誇る音はあらゆる物体を形作る分子の結合をも侵略し、
結果、彼等は跡形もなく吹き飛び、次の瞬間にはまた光線が放たれる。

そしてこの二人を、百のワルキューレが上空より援護するという不敗の陣形。
ホワイトヒート・エンジェルが残したシュミレーションデータ通り、この部隊は各地で猛威を振るった。
それは十倍の兵力を誇る大隊を相手にしてもそれは変わることなく、
二人の天使を軸とした陣形は如何なく発揮されていた。

サウンドマスター・エンジェルは、この陣形の発案者である軍師を思い浮かべる。
ホワイトヒート・エンジェルは本来天使としては最下級のエンジェルである。
絶対的破壊力も優れた防衛能力も持たない、完全なバックアップとしての機能だけを持ちこの世に生を受けた。
腐っても天使である以上、それ以外の者達には十分恐るべき存在だが・・・・・・
それでも下級天使達は総じてコンプレックスを抱いている。
きっと彼女もそうだったのだろう。
しかし彼女は戦闘力を問わない分野、
知力だけでシングルナンバー・エンジェルに進言できるほどにまでのしあがったのだ。
そんなホワイトヒート・エンジェルを、サウンドマスター・エンジェルは心の底から尊敬していた。
それだけにとどまらず、昔から年長者として何かと世話を焼いてくれていた彼女を。

あの人には幾度も助けられた、悲しい事があってもあの人が慰めてくれたから涙で枕を濡らさなかった。

サウンドマスター・エンジェルは、いつしかホワイトヒート・エンジェルに忠義を誓うようになった。
憧れの対象としてではなく、全てを捧げるべき主君として彼女を慕うようになった。
しかし彼等は、この異端の軍勢は。
使者として送られた彼女を殺したのだ。
戦争中に一人で乗り込み、ふざけた条件をつきつければ殺されるのは目に見えていたのに。

──ああ、そんな命令は断ってしまえば良かったのに、逃げてしまえば良かったのに。
でも彼女は逃げなかった。逃げずに立ち向かった。
そんなあの人だから、私は──ホワイトヒート様を殺した奴らを絶対に許せない。
黒の異端は当然殺す。赤の異端も、同じく殺す。
そして、下級天使であるホワイトヒート様の活躍を喜ばしく思っていなかった連中。
彼女の死を計ったのであろう連中も、時いたらば・・・・殺す。
シングルナンバー・エンジェルであるジャッジメント様にはきっと出来ないだろう。
ならばそれは、私の役目だ。


サウンドマスター・エンジェルはそう信じ、今日もたくさんの命を奪った。
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2007年01月31日

黙示録の日まで11

「・・・・同士諸君。これより我々は丘の向こう、卑しき異端の軍勢に打って出る。
敵兵力は千、しかし恐るるに足らず。口火を切れ!!異端の軍勢を、一切合切朱に染めよ!!」

アポカリプスは百の兵の前に立ち、演説を始める。
兵力差は単純計算で十倍以上。
勝ち目は無い。餓鬼でも分かる道理だ。
とても正気のさたではない。

──だというのに。

兵達の瞳は燦々と輝き、面持ちは確固たる決意に満ちている。
いつものように武器を状態を点検し。
いつものように陣型を確認し。
それが終れば、いつものように武勇伝を披露する。そう。

彼等は、勝つつもりなのだ。

何故なら彼等には、二人の天使がついているのだから。

-----------------------------------------------------------------

ラインハルトは骨の馬車に乗り、ある場所を目指していた。
彼の主にして未だ衰えを知らない偉大なる新祖、幻影王ルドルフの屋敷である。
その懐に、メディアより授かった吸血鬼殺しの粉を忍ばせて。

(確かに・・・・良い機会かもしれぬ。
メディアに言われなきゃ、いつまでたってもやらなかっただろうし)

話によれば、この粉はメディアが白の大陸を出発する際、
宝物庫から持ち去った聖遺物の一つを砕いて粉末にしたというなんとも罰当たりな代物らしい。
こと陰の者に対しては、まさに必殺の毒であると言えるだろう。

(ま、ワインあたりに混ぜるのが妥当か)

ラインハルトはいつでも密かに毒を取り出せるようにと、毒の包みを袖に忍ばせる。

(さぁ・・・・親殺しの時間だ)

ラインハルトを乗せた馬車は大きな門をくぐり、黒い屋敷の扉の前でその車輪を止めた。

──ゴン、ゴン。

ラインハルトは鮮やかな装飾の施された扉の錠前を二度打ち鳴らすと、
すぐに出てきたサキュバスのメイドに客室へと案内されて行く。

(うぇ・・・・なんだ?あの絵画。また新しいの買ったのか……趣味悪いな)

メイドは客室にラインハルトが入ったのを確認すると、失礼しますと残して扉の外に出る。
おそらくは扉の前で待機しているのだろう。
ラインハルトが黒い長椅子に座ると、やがてルドルフがサキュバスを数人はべらせ、部屋に入ってきた。

「気が付いたかね?新しい絵画を買ったんだ。少々値は張ったが、良い買い物をしたよ」

「ええ、拝見しました。いやはや、素晴らしいの一言に尽きます。タッチが良いですな、タッチが!」

(糞親父が、遺産に手をつけるな)

ルドルフは内心毒づきながらも、色合いがどうだの線がどうのと、
つい先ほど悪趣味と一蹴した絵画をこれでもかと誉め千切る。
サキュバス達は中年二人の会話が面白くないのか、しきりに髪をいじったり爪を磨いたりしている。

「ふむ、技術も確かなんだがね。やはり絵は心だ。信頼関係においても、まったく同じことが言える。そうだろう?」

サキュバス達が欠伸をし始める頃、ふとルドルフがそう呟いた。

(な・・・・!バレた?いや、しかしまだ毒は盛っていない・・・・!!どうするよ、メディア!!)

ルドルフはラインハルトを睨みつけると、見覚えのある本をとりだし、ラインハルトにつきつける。
「この前君から返してもらった本な、見ろ!カバーのところに折り目がついついる!」

「・・・・はい?」

「よく見ろ!ここんとこに折り目がついついるだろ!私も弁償しろとまでは言わない。
しかし君、心使いが足りないんじゃないか?君が読みたいというから貸したんじゃあないか!!」

(うるせぇ馬鹿!驚かせやがって!大体、その本はお前が“絶対面白いから”
とか言って無理矢理貸したんじゃねーか!!つまんなかったよ糞!!)

ラインハルトがへいこらと頭を下げると幾分は機嫌が良くなったのか、ルドルフは手元のベルを鳴らしメイドを呼ぶと食事の準備を命じる。

「ところでラインハルト。あの本どうだった?」

「いやはや、素晴らしいの一言に尽きます。シナリオが良いですな、シナリオが!」

すでにサキュバス達は眠りこけていた。

やがてルドルフとラインハルトは食事をするため、別の部屋に移動していた。

「ラインハルト、楽しみにしていたまえ。今日は君が来るというので、
わざわざ私自らメニューを決めたのだ。絶対に美味いぞ、この城を賭けても良い」

「ハハハ、それは楽しみですな!どんな御馳走が出てくるのやら」

食事部屋に着くと、ラインハルトはすぐにテーブルの上に並べられた料理を見やる。

(なんで魚のソテーに赤ワインなんだよ!魚には白、常識だろうが!)

ラインハルトが内心で料理にをけなしている間に、ルドルフはワイングラスを手にとってしまう。
まだ毒を盛っていない。しかし怪しまれてはと、ラインハルトも直ぐにワイングラスを手にとる。

「こ、これは良いワインですな。素晴らしいの一言に尽きます。香りが良いですな、香りが!」

(せっかちすぎだろ!そんなに酒が飲みたかったのかコイツは!ああ〜スマン、メディア!!)

そんなラインハルトの心境を知ってか知らずか、ルドルフはワインを一口すする。
するとルドルフの表情はみるみるうちに苦痛に染まり、ワイングラスを落とし膝を床に付けうめき声をあげ始めた。

(ま、まだ私は毒を盛っていないぞ!?)

すると扉が開き、美しい少女が部屋に入りラインハルトにウィンクをする。
白の大陸を捨て異端に墜ちた天使、メディアである。

「メ、メディア・・・・これは一体!?」

ラインハルトが混乱しつつもメディアに質問をすると、
メディアはルドルフの脇腹に蹴りを見舞いつつ質問に答える。

「お前の財産を贅沢に使って、この屋敷の人間全てを予め買収しておいた。
どうせコイツの富が手に入るんだ、念には念を入れておいて損はないだろ?
お前がスマートに事をこなせばチャチャを入れないつもりだったんだが・・・・
いかにも駄目そうだったんでな。慌てて食事係に毒を漏らせたってわけだ」

メディアはまったく世話のやけるお兄様だよ、と微笑む。

「メ・・・・ディア・・・・ラインハルトォ・・・・・・!!貴様ら、ただですむと思うな・・・・・・!!」

メディアは床を這うルドルフを睨みつけると、鼻で笑いルドルフを踏みつける。

「随分粘るじゃあないか、お父様。でも残念だったな、死に損ない。
ソイツに耐えれる吸血鬼なんていないよ」

メディアが言った通り、程なくしてルドルフはその長い人生に幕を閉じた。
ラインハルトはよほど安心したのか、ヘナヘナと床にへたりこむ。

「助かった……メディア、礼を言う」

「お礼は結構。それより頼みがある」

「頼み?良いだろう、出来る範囲でお応えする」

メディアは嬉しそうに口元を吊り上げると、ラインハルトに申し出る。

「まず、ラインハルト。お前はこの大陸をこのまま支配し、トップにつけ。
なに、お前は勝負どころに弱いが、基本的に優秀だ。手段は任せる」

それを聞くと、ラインハルトは不思議そうに眉を寄せ、メディアに問う。

「それはむしろ望むところだが……それで君に何のメリットがあるんだ?」

「“まず”と前置きしたろう。もちろん続きはある。支配が完了したら、
私はお前の地位と富を使い色々やるだろう。それを黙認してくれ」

ラインハルトはますます理解しがたいと眉を寄せる。
メディアほどの手腕があれば、大陸の支配など自分で出来そうなものだ。
そう考えていると、メディアが説明を始める。

「不思議か?お前に支配を頼むのは必要なことだよ。私では無理だからな」

「無理だと?馬鹿な、そんなこと君にできないはずがあるまい?」

「器量の問題じゃない、物理的に不可能なんだ。
この大陸を支配するのに最も手っ取り早い方法はなんだ?」

「貴族達を傘下に置くことだろう。元々支配者だったルドルフを殺しのだ、それほど難しいことではない」

「分かってるじゃあないか。そう、貴族達を掌握することこそ、一番の近道だ。
で、お前ならぽっと出の、それも天使と吸血鬼の混血の小娘の言うことなんか聞きたいか?」

ラインハルトはようやく理解したらしく、ポンと手を叩き質問に答える。

「ああーなるほど!!貴族はプライドが高いからな、勝ち目が無いとは言え
間違えなく反旗を翻す。むしろ我々以外の貴族達で同盟を組んでくるだろう。その点私なら……」

「そう。元々この大陸のナンバー2だからな。それぞれ返り咲く気はあるだろうが、当面は大人しく言うことを聞くだろう」

「分かった。だが、よほど無茶を言うようなら私も止めさせてもらうぞ。それでも良いなら、好きにするが良い」

ニヤリ──メディアは壮絶なまでの笑みを浮かべる。
そしてルドルフの元に跪き手を自分の胸に当て、静かに呟いた。

「感謝の極み──!!」
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2007年01月26日

黙示録の日まで10

竜の相手は天使でなくては務まらないとは、よく言ったものだ。
いかに竜として弱い固体であっても、竜の相手は天使であることが大前提なのである。
それほど竜という種族は規格外の力を有している。
私が天使でない以上、彼らに戦いを挑むのは無謀以外のなにものでもないだろう。
今一度言う。それほど竜とは、“ドラゴン”とは。
常識では決して推し量ることのできない、絶対的な力を持つ魔獣なのだ。
ではその竜を一方的に痛めつける“アレ”は一体、なんだのだろうか。

──キュゴウ!!

竜の翼が吹き飛ぶ。竜は飛行能力を失い、地へと真っ逆さまに墜ちて行く。

チカッ。

アレの操る飛行ユニットの中央に輝く、太陽の描かれた巨大な水晶。
それが一瞬眩い光を放ったかと思うと、少し遅れて爆音が轟く。
次の瞬間竜の腹に風穴が穿たれ、逞しい竜の体はバラバラに爆散し地に炎が渦巻く。
アレは本当に天使なのだろうか。私は色々な天使を見てきた。
そのどれもが出鱈目な力をもった怪物であったが、これほどの怪物に出会った事は一度もない。
あろうはずがないのだ。
何故なら竜もまた、その存在の全てがことごとく出鱈目だから。
出鱈目は、それを超える出鱈目でなければ妥当し得ない。
そんな竜を反撃の余地すら与えず、一瞬で屠りさるアレの姿は、天使というよりも────

「悪魔、か・・・・・・?」

その小さな呟きをも聞き逃さない音の匠、戦場の“音”全てを操る天使が私の隣に舞い降り、私を咎める。

「口を慎みなさい、轟く斧の乙女。上官に悪魔などと、反逆罪に相当しますよ?」
「も、申し訳ありません、サウンドマスター副隊長・・・・!!」

この幼い天使はこの部隊の副隊長を務める、サウンドマスター・エンジェル。
彼女もまた常識と言う名の理を平気で踏みにじる、出鱈目の一人である。
しかしそれでも、先刻竜を一瞬で屠りさった天使・・・・・・・・
この部隊の長を務める、アポカリプス・エンジェルほどの恐怖は感じられない。

「白の民、討ち取ったり!!」
「!!」

刹那、背後の岩陰から小型の竜とサラマンダーが数機飛び出し、私と音匠の天使に灼熱の吐息と鉛の雨を放つ。

──避けきれない。

次の瞬間、私は信じられないものを目の当たりにする。
炎が掻き消され、弾が“逸れた”。
それと同時に先刻まで彼らが潜んでいた岩ごと、竜と鉄の兵が粉々に吹き飛んだ。
耳鳴りがする。まさかと隣を見やると、案の定。
音匠の天使が円盤のひとつを彼らがいた場所に向け、ほくそ笑んでいた。

「指向性を持たせた音の槍だ。貴様ら異端など、屁でもない」

・・・・つい先ほどまでの自分は、間違っていたらしい。
“アレ”も“コレ”も・・・・もはや私などでは度し難い化け物だ。

「あなた達は一体・・・・・・」

失礼と理解しながらも、訊かずにはいられなかった。

「私はあなた達を知っています。訓練する姿も何度も見ました。しかし・・・・この戦場に出てからのあなた達は・・・・まるで・・・・・・」

「悪魔のよう?」

サウンドマスターが不適に微笑みながら、私に問い返す
少し迷って、私が答える。

「・・・・ええ。失礼ですが・・・・・・。何があなた達をそこまで変えてしまったのですか・・・・?」

私の言葉を聞くと、サウンドマスターがニヤリと笑う。
ぞくり。背筋が凍る。それはまさに、悪魔の微笑み・・・・。

「憎悪」
「え・・・・・・?」
「身を焦がすような激しい憎悪・・・・それが私達の原動力だ」

酷くあっけなく、意外な答えだった。
憎悪、そんなものが彼女達に鬼神の如き力を与えているというのだろうか?
戦争。それは憎悪の塊と言える。この死地において憎悪を抱く者がどれだけいるだろう。
ある者は、親しい人を奪った敵に。ある者は、この理不尽な時代に。
ある者は、戦争そのものに。
それらの感情は、ある程度までなら人を変えるだろう。
しかし彼女達のように馬鹿げた力など、出せようはずがない。
すると私の考えを悟ってか、サウンドマスター・エンジェルはぽつりと呟いた。

「私達は、多くを望まない」

最初は、この言葉の意味を理解できなかった。いや、今も完全には理解できていないだろう。
しかし、この意味不明な言葉。それこそが彼女達を変えてしまった全てだと感じた。
この言葉を呟いたあと、彼女は背中を向けて歩き出す。
その姿に先ほどまでの悪魔のような面影はどうしても重ならず、
私にはその背中が、むせび泣く少女のそれに見えた。

-----------------------------------------------------------------

私達は、多くを望まない。

私達を突き動かす憎悪。それは言ってしまえば、復讐心だ。

私達は、多くを望まない。

そう、私達は仇の絶滅以外には何も望まない。
家族も、友人も、静かなる暮らしも、何一つ。
自分が傷つくことも、手を血に染める事も厭わない。

私達は、何も望まない。


この命すらも。
ニックネーム ある at 13:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月12日

黙示録の日まで9

「ラインハルト様・・・・お客様が見えております」

タイトなスーツに身を包んだ眼鏡の女性が、主君に客人の来訪を伝える。
その主君はというと、先ほどから机に向かい頭を抱えている。

「ああ・・・・すぐに行く。待たせておいてくれたまえ」

ラインハルトと呼ばれた髭を生やした紳士。この男こそ、緑の大陸侵略の首謀者である。
彼は途方に暮れていた。緑の大陸の侵略に失敗したからではない。
原因は、“親”と呼ばれる彼の主君。幻影王ルドルフにあった。
緑の大陸侵略作戦は悪い結果ではなかった。侵略こそできはしなかったが、
エルフの重役暗殺を含む大きな戦果を挙げた。
さらに赤の大陸との同盟を結び、十分な戦力も整いつつある。
だというのに、ルドルフは不満と言うのだ。
曰く、自分の子でありながら侵略も一つも満足にできない大陸の面汚し。
ましてや最も優れた種族である吸血鬼が他大陸との同盟を組むなど、言語道断とのことだ。

「全くどうしろというのだ・・・・。そんなに言うなら自分でやれっつーの・・・・・・」

ワイングラスの中身を一気に飲み干すと、ラインハルトは席を立ち客室へと足を運ぶ。

「お待たせした・・・・・・む、君だったか。なんの用かね?“元”天使殿」

長椅子に座る女性はニヤリと笑い、口を開く。

「そう邪険にするな。“親”を同じくした兄妹だろう?仲良くしよう」

「ふん・・・・話を聞こうか。おい、君」

先ほどの眼鏡の女性・・・・オフィス・レディは二人の前に温めたティーカップを置き、紅茶を注ぐ。

「今お茶菓子を持って参ります、少々お待ちください」

彼女は葉巻を取り出し、派手な装飾の成されたハサミで葉巻の頭を切り落とす。

「それと灰皿を頼む。お茶菓子はスコーンがいいな。ジャムは任せるよ」

マッチを擦り葉巻に火を点けると、ラインハルトは眉をひそめる。

「この部屋は禁煙だ。そこに五ヶ国語で書いてあるだろう、ホワイトヒート」

「そういうなって。それとその名はよしてくれないか。私の名はメディアだ」

煙をゆっくり吐き出すと彼女、メディアはラインハルトを咎める。

「メディア・・・・裏切りの魔女の名だな。自虐趣味でもあるのかね?“メディア”」

お似合いだな、と。紅茶を啜りラインハルトが皮肉めいた声色で囁く。
メディアはそれを無視し足を組むと、スリットの入ったドレスから若干足が露出される。
ラインハルトは思わず口笛を吹きそうになるが、いかんいかんと慌てて自分を戒めた。

「ん〜、どうしたラインハルト?足フェチか?もうお兄ちゃんのエッチー」

「君・・・・本当に元天使かね・・・・」

ラインハルトが溜息をつくと扉が開き、オフィス・レディが戻ってくる。

「ご希望通りスコーンを・・・・ジャムはお好みのものが分からなかったので、白の大陸で親しまれている薔薇のものをお持ちしました。それと灰皿を」

「うおぉ、好きなんだよな〜コレ」

メディアはありがとうと礼を言うと、ラインハルトの方に無理直り真剣な表情を作る。
ラインハルトも雰囲気を察してか、顔を引き締めオフィス・レディに外してくれ、と一言。
オフィス・レディが部屋から出て数秒後、メディアはゆっくりと切り出した。

「殺してしまいたい奴がいるんだ・・・・・・」

ニックネーム ある at 17:38| Comment(0) | TrackBack(2) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月10日

黙示録の日まで8

透き通った天使の髪は、漆黒に染まってゆく────。



「どうかね?これが吸血鬼だ」

幻影王の問いに白熱の天使・・・・否、“堕天使”は満足そうに答える。

「素晴らしい・・・・ハハハハハハ!!全く素晴らしい!!ああ、なんて晴れやかな気分なんだ・・・・貴方に永遠の忠誠を・・・・・・幻影王ルドルフ」

天使とはつまり、エネルギーを精製する永久機関を持った生物である。自らが精製したエネルギーを原動力に、ロストテクノロジーの粋を結集したユニットを運用する。
機械部分と生物部分が完全に分かれた半機械生物とは一線を画した存在、それが天使だ。

ホワイトヒートは確信する。吸血鬼と化した天使こそ、生物の究極進化形だと。
もはや機械のユニットなど必要無い。
吸血鬼化したことによって手に入った圧倒的魔力、破壊的なまでの身体能力と強靭な再生力、そして無数の特殊能力。
加えて元々自らの持つ無尽蔵のエネルギー。これを最強と言わずしてなんと言うのか。
これならばやれる・・・・・・!!ホワイトヒートは心中、ガッツポーズをとる。

「約束だ、白の大陸の情報を渡してもらおう」

自分の得た強大な力に満ちていたホワイトヒートは、途端現実に引き戻される。

「は・・・・そうでした。では説明させていただきます・・・・・・・・」

いや・・・・・・まだ邪魔者がいるか・・・・・・・・・・。
もうこの役者は不必要だ。早々に舞台からご退場願いたい。
──幻影王ルドルフよ。





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2007年01月08日

黙示録の日まで7

「仰る意味がよくわからないのだが・・・・」

黒の大陸。そこに建つ館の中でもひときわ大きいソレに、ホワイトヒートはいた。

「黒の大陸への侵略を見送る代わりに、赤の大陸から手を引いて欲しい。そう言いました。なにとぞ、良いお返事を」

幻影王ルドルフは、人をも殺しかねない眼光でホワイトヒートを睨みつける。
ルドルフが憤怒するのも無理は無い。これはつまり、『命だけは助けてやるから、大人しく言う事を聞け』という、脅迫に他ならない。
しかも、ここはゴーレムすら蝕む瘴気に覆われ、飛び交う妨害電波により通信もままならない黒の大陸である。
いかに天使とはいえ、敵のホームにたった一人で赴きそんな条件を付き付けても、当然相手は要求を呑まないだろう。
ホワイトヒートは心中舌打ちをする。
白の大陸は完全な上下社会だ。シングルナンバー・エンジェルを利用し手に入れた軍隊で挙げた武功など、頭のお堅い上級天使達は認めない。
自分は有能ゆえ今まで処分こそされはしなかったが、もう潮時だ。無能な俗物どもめ。

「答えはNOだ。貴殿をここから無事に帰す気も無い。わかるだろう?」

刹那、無数の影がホワイトヒートを貫く。

嗚呼、私はここで死ぬのか。皆は悲しんでくれるだろうか。私の死を哀れんでくれるだろうか。

──否。ありえない。
私は武功こそ挙げはしたが、それは姑息な手段と卑怯な戦術を以って成したもの。
私は酔っていた、酔いしれていたのだ。一騎当千の戦闘力を誇る幾千の敵兵を、
卑劣な手段で以って虫けらのように叩き潰すことに。
しかし甘美な砂糖菓子は、あっという間に舌に溶け、消える。
遊撃隊を率い、一方的な殺戮を行っているときにはもう気付いていた。
一向に埋まってくれない心の溝。
私はこんな空虚な、空っぽの心を抱えて朽ちてゆくのか。

「美しき天使よ。言い残す事はあるか?」

否、断じて否。私は滅びぬ、決して死なぬ。
心が空虚というのなら、そんなもの埋め尽くしてしまえるだけの力を持てばいい。
圧倒的な力を行使して、隙間など残らず埋めてしまえば良いのだ。

「誇り高き・・・・吸血、鬼の・・・・・・長、よ・・・・・・」

嗚呼、もう戻れはしないだろう。暖かくて眩しい、仲間達との日常。
だって────

「私の持つ全ての情報をくれてやろう・・・・・・・・私の血を────

吸うがいい」

もう私自身が、それを望んでいないのだから。


















ホワヒが裏切って吸血鬼になったはいいけど、このあとどうすればいいんだろう。
ニックネーム ある at 16:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月06日

黙示録の日まで6

「ええ・・・・わかりました。はい・・・・では行ってまいります」

ふぅ・・・・・・受話器を置き、ため息を吐く。
まさかここまで早いとは・・・・ホワイトヒートは思わず感心する。
確かに今の私は、もはやあの方にとっては用済みだろう。
私はもう十分すぎる戦果を挙げたのだ。そういう奴は驕り、慢心する。
それを見越してのことだろう。とはいえ、こんな簡単に切られるとは・・・・いささか驚きである。

「んん・・・・むにゃ・・・・どうしたのですか・・・・?ホワイトヒート・・・・・・」

ダブルベッドの上に横たわる裸体の女性が、ホワイトヒートに声をかける。
ホワイトヒートはその女性の髪を撫で、笑顔でそっと囁く。

「ちょっとお仕事に行ってくるよ。さようなら、ジャジ姉」

-----------------------------------------------------------------

「ホワイトヒート・エンジェルが戦死しました」

大聖堂にアポカリプスを呼び出したジャッジメント。
彼女が放った第一声がそれだった。

「そん・・・・な・・・・・・ホワイトヒート様が・・・・・・・・!?いつ、どうして!?」

「昨夜、彼女は黒の大陸に使徒として派遣されました。・・・・赤の大陸から手を引くようにと・・・・私も詳しくは知りませんが、交換条件を持ちかけに行ったのです」

「それで・・・・どうしたのですか・・・・・・?」

「取引は不成立。ホワイトヒートは黒の住人に・・・・・・殺されました」

ジャッジメントは悲痛な面持ちで、やっと声を絞り出した。
ジャッジメント様は昔からホワイトヒート様に依存しているところがあった。
それだけ悲しみも大きいだろう。そして・・・・サウンドマスターだ。
あの娘はホワイトヒート様に憧れていた。きっと悲しむだろう。
──私だって。

「今日の夕方ごろ・・・・ニュースで報道されます・・・・・・・・・」

「話はそれだけじゃないでしょう・・・・ジャッジメント・エンジェル」

許せない。また私から大切なものを奪ってゆく、彼らが許せない。

「・・・・そうです。あなたに命令を下すため、あなたをここに呼びました。二度の拒否は許されません」

彼らは報いを受けねばならない。全能なるマザー・パレスの裁きを受けなくてはならない。

「裁きの天使より、黙示録の天使に告ぐ。異端者共を根絶やしにせよ。
さぁ・・・・行ってあなたの親友の仇を討ってきなさい。アポカリプス・エンジェル」

「“AMEN”────全てはマザー・パレスの御心のままに」
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2006年12月12日

黙示録の日まで5

「はぁ・・・・はぁ・・・・」

──カチ、カチ。
どこからか、音がする。

「ああ・・・・恐ろしい・・・・恐ろしい・・・・」

──カチ、カチ。
これは、奥歯が打ち鳴らされる音だ。
彼女は、未だかつて出会った事のない・・・・“恐怖”という魔物に侵されていた。
自分で言うのもなんだが・・・・これでも、腕は立つ。
幾度も修羅場を潜り抜けてきたし、“鮮血の花束”といえば、この大陸でも知らないものはいない。
死ぬのは恐くない。私にもハーピィの誇りがある。矜持がある。
たとえ翼を灼かれようとも、弾薬を撃ち尽くすまでは戦い抜いてみせる。
今回だって、あんなガラクタどもに負ける気なんて、微塵もなかった。
しかし、見てしまった。
あの女の────つまらなそうな顔を。

「まだ生存者がいたか・・・・・・よくぞ生き残ってくれた。ブラッディ・ブーケ」
「ひ、ひぃぃ・・・・!!」

背後から声をかけられ、ブラッディ・ブーケは無様に地面を掻き、逃れようとする。

「落ち着け!私だ、メテオブリンガーだ!」
「あ・・・・」

最も古い竜族の一にして、絶対的破壊力をもつ最長老の一人メテオブリンガー・ドラゴン。
間違いなく赤の大陸、最高戦力の一人だ。
しかし誇り高き竜の長の面影は・・・・すでにない。
鱗は爛れ、爪は砕け、大地をも穿つと言われた自慢の巨砲は半壊している。
しかしその知性と威厳に満ちた声だけは変わらず、ゆっくりと彼女に語りかける。

「強い戦士は死なぬ。常に生き残る術を探すからだ。誉れ高きハーピィの戦士よ。よくぞあの地獄から生還した」

しかし、その賞賛の言葉も彼女の耳には届かないようだ。

「一体・・・・一体なんなのですか、“アレ”は!!そんな・・・・まさかあんなのが・・・・」
「そうか、見たか奴の姿を・・・・“アレ”が天使だ。戦の徒だ。恐れる気持ちもわかる・・・・しかし、それを矛に変え・・・・」
「いやだ!!もういやだぁ!!あんな・・・・あんな・・・・ひ・・・うぅ・・・」

ああ・・・・折れてしまった。
メテオブリンガーはこういう戦士を何人も見てきた。
恐怖にとらわれ、戦えなくなってしまった戦士を。

「よく・・・・戦ってくれたな。ホームまで送ろう。私の尾にでもつかまるがいい」

竜の長には、彼女の気持ちが痛いほどわかった。
彼も見たのだ。あの天使の顔を。若い彼女が戦意を喪失するのは無理も無い。
そも、生き残っただけでも十分過ぎるほど優秀だ。
それだけに────この結果を悔しく思う。

ああ、見たさ私も。白い炎を撒き散らす、棺の少女を。あのつまらなそうな顔を。
恐らく彼女が指揮官なのだろう。見事な戦況運用術だ。恐ろしく有能と言えるだろう。
しかしどんな指揮官であろうと、あれほど圧倒的に戦況を運用できたのなら、少なからず慢心するものだ。
国のために多大な戦果を己がもたらした事実に歓喜するはずだ。
しかし彼女はそうではなかった。
彼女は退屈だったのだ。退屈でしかたがなかったのだ。
アレは相手の命を、命という灯りを奪おうという行為を、ただの退屈な“作業”と認識している顔だ。
先日出会った小さな天使には、少なくとも心があった、戦争を嘆く感情があった。
アレは全く別物ではないか。
彼は改めて確信する。彼女達は殺戮兵器────キリングマシーンなのだと。


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2006年12月04日

黙示録の日まで4

「待たせたな、諸君」

白の大軍団に澄んだ声が響き渡る。
今やホーリークリスタル・エンパイヤにおいて、
知らぬもの無しというほどの軍師、ホワイトヒート・エンジェルである。
彼女が指揮をとった殲滅戦のことごとくが圧勝、軍師としての手腕を見せ付けた上、
緑の大陸を事実上傘下におく同盟を先陣を切って行った事から、
彼女の言葉はもはや予言じみた信憑性を持つ。

「おい・・・・ホワイトヒート様だぜ・・・・・・」
「美しい・・・・今回も勝ったも同然だな」

彼女を称える言葉がところどころから飛び交い、士気は否応無く高まる。
この部隊は半数以上がパラディンで構成されており、残りが大型ゴーレムやワルキューレ、そしてエンジェルで構成された決戦部隊である。

「今回の作戦は諸君らが“遊撃隊”として出撃、赤の異端者らを殲滅して回る大規模なものだ」

──ざわ

瞬間、兵士達がざわめく。
赤の大陸の持つ攻撃力は未知数だ。もともと頭一つ抜きん出た攻撃力を持っていたのに加え、
必殺の殺傷力を持つ黒の大陸と同盟を組んだのだ。
これほどの大隊とはいえ、それを“潰して”回るなど、狂人の沙汰である。

「安心したまえ、全ては私のシナリオ通りだ」

ホワイトヒートの言葉にざわめきこそ収まるが、彼らの目からは未だ疑惑の色が消えない。
その様子にホワイトヒートはタメ息をつき、説明を始める。

「小規模な部隊を、大規模な部隊の圧倒的戦力で以って、反撃の余地さえ与えぬまま叩き潰す。兵法の基本だ。先刻、拠点撃破部隊『ソニックブーム』から『戦場のドールハウス』、『陸上空母』、そして『歴戦の城砦』を破壊したとの伝達を受けた。それに便乗し大型ゴーレムと転移ペガサスを主力とした部隊を80赤の大陸に送った。先ほどエンジェルナンバーSINGLE・コード『ジェノサイド』より送られた衛星写真から、散り散りになった敵部隊の一掃を可能と判断した。私を信用したまえ」

兵士達は絶句する。作戦の内容は間違いなく成功するだろう。
問題は、彼らの矜持だ。拠点撃破のみを目的とした部隊で敵の“足”を止め、
ゴーレムやペガサスなど命無き機械の部隊を捨て駒として敵軍をかき乱す。
敵が必死に戦況を立て直そうとする中、万全と整った大隊で叩き潰す。
敵の命を奪おうというのに、こちらは命を差し出していない。
誇り高き聖堂騎士である彼らパラディンにとって、それは己が矜持を裏切る行為だ。
ワルキューレやエンジェルたちも、困惑した表情を見せる。
刹那、野太い声が響き渡る。ホーリー・バスタードだ。

「あー、うっせぇうっせぇ。ヘタレどもが。卑怯?結構じゃねーか。戦争なんてのはな、勝ちゃあいいんだよ、勝ちゃあ。そうだろ?天使様よ」
「・・・・その通りだ。戦争とは君達の思うような甘いものではない。汚れなど戦果で洗い流せる。つまらぬ誇りなど、犬にでも食わせておくのだな(敬語使えよオッサン・・・・)」

サウンドマスターがホワイトヒートを庇うように続く。

「立場をわきまえなさい、命令無視の兵隊など、誉れ高き白の大隊には必要ありません。今すぐ本作戦から降りなさい」

冗談ではない。敵前逃亡など、マザー・パレスの御前でできるものか。
そんなことをしては、彼らは彼らで“なくなってしまう”。
誇り高き聖堂騎士ではなくなってしまう。ならば、選ぶ答えは一つだった。

「では、出撃だ」
































何故か知らんがホワイトヒートが大好きになってしまった。
個人的には、ヘルシングの少佐とマクスウェルと、デスノートの月君を足して2で割った感じ?






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2006年11月21日

黙示録の日まで3

薄暗い大聖堂に、一人の美しい少女が鎮座する。待ち人の来訪を待つ、ジャッジメント・エンジェルである。
少しして、大聖堂の扉が開く。軍師、ホワイトヒート・エンジェルだ。

「ジャジ姉、どうだった?」
「・・・・断られました。あの娘の意思を継いで行かなければならないと・・・・あの娘、すごく辛そうな顔をして・・・・でも貴女の作戦に支障が出るかも・・・・やはり強制すべきだったでしょうか・・・・?」

ホワイトヒートは一瞬ぽかんとすると、カラカラと笑い出す。

「ハッハッハ!断られちゃったか!ククク・・・・そっかそっか、なるほどねぇ・・・・」
「何がおかしいのですか!?」

一人勝手に納得し笑い転げるホワイトヒートにムッとしたのか、少し強い口調でジャッジメントがそれを咎める。

「ごめんごめん・・・・クク・・・・・・いや、ジャジ姉はよくやってくれたよ。そこは退いて正解。強制じゃあ、意味がないからね。そっかぁ、断ったのかぁ・・・・・・」

笑いをこらえきれず腹を抱えるホワイトヒートを見て、ジャッジメントの頭に疑問符が浮かぶ。

「えと・・・・アレでよかったのですか?てっきり私は、またなじられるものかと・・・・」
「ああ、今のところはね。いまいち統率のとれていない赤に対し、こちらの戦況は申し分ない。ジャジ姉が私の言ったとおり、量産型ゴーレムを中心とした部隊を編成してくれたおかげだよ。恐らくそろそろ黒の異端者共と手を組むはずだから、緑の連中と話をつけといてね。利害は一致するはずだから、断られりゃしないよ」
「緑の住人と?ですが彼らの文明は酷く原始的です。それは断られはしないでしょうが・・・・メリットが薄いのでは?」

ホワイトヒートは笑みを崩さないまま続ける。

「あいつらの戦力には、たいして期待しちゃいないよ。適当に戦力を与えて、好き勝手やらしといてよ」
「だから、それならはじめから同盟など組まずとも良いのでは?それならば青の大陸と同盟を結ぶべきです。彼らの技術力ならば、きっと大きな戦果を与えてくれます」

いつまでも真意を明かさないホワイトヒートに、ジャッジメントは若干イライラしつつ質問を続ける。

「うんにゃ、奴らは誰とも組まないよ。図々しくも、漁夫の利を狙ってる。それこそ、あっちには私達と組むメリットが無いね」
「ですから先を言いなさい!!怒りますよ!?」

ジャッジメントが声を荒げる。そこには、普段大衆の前での凛としたシングルナンバー・エンジェルとしての面影は無い。

「オーロラウォール」

ジャッジメントの頭に、さらにもう一つ疑問符が浮かぶ。

「あれは運用コストに問題があって凍結中のはずですよ?あ、ひょっとして部分部分に小規模なオーロラウォールを展開するとか・・・・」
「いや、全展開だ。このホーリークリスタル・エンパイアを、まるごと覆う。緑の連中の持つエネルギーとそれを発生させるテクノロジーを頂けば、十分おつりが来る」

ジャッジメントがなるほどと手を打つ。

「奴らは文明こそ原始的だが、持て余してるエネルギーとあそこに眠った遺跡たちには十分利用価値がある。私達の防衛力は比較にならないほど跳ね上がるよ」
「ですが、そう簡単に貴重な資源を差し出すでしょうか?同盟とはいえ、異大陸です。出し惜しみをするのが目に見えているのでは?」
「だ・か・ら、あいつらが本格的にヤバくなったところに話を持ち出すのさ。これは同盟であって同盟じゃない。対等な立場じゃないんだよ。奴らの大切な森が侵され、赤と黒の同盟によって水増しした軍勢に喘いでいるところに・・・・それこそ“天使”の如く手を差し伸べてやるのさ。助けてやるから資源をよこせ・・・・ってね。実際、エルフの重役共が暗殺されて、奴らは今あっぷあっぷのはずだよ。どうせ後で膨大な資源が手に入るんだ、ゴーレムをバンバン量産しちゃいな。同盟のタイミングは私が見計らう。あとはジャジ姉の仕事だよ・・・・クク・・・・・・」

ホワイトヒートの立てた作戦に、ジャッジメントは驚きを禁じえない。彼女は一体、どれだけ先を読み動いているのか。有能な名参報を頼もしく思う反面、危うくも思う。
ピースキーパーの死亡報告以来、彼女はまるで別人だ。姿見や振る舞いこそかつての彼女と変わりないが、腹の底が読めない。
以前のそれとは違い、真っ黒な何かが渦巻いているかのような不安さを覚える。
まるで、常人には図りえない、何かとてつもない野望を抱いているかのような・・・・・・。

「話がそれたね。アポカリプスのことだけど・・・・今は放っておいていいよ。現段階では、戦場に出撃して欲しいっていうこっちの意思を伝えておくだけでいい。クク・・・・何も心配する事なんかないよ、ジャジ姉。あの娘はいずれ、自分から望んで異端者共を狩る・・・・・・不安に昇華した悲しみが怒りに、そして奴らへの見境の無い殺意へと昇華するのを私達はただ待てば良い。
復讐心が生み出す力の爆発力は絶大だ。ゆっくりでいい、あの娘の不安の種に水をまいてやろう・・・・クク、楽しみだよ、怒りに揺らめく炎が異端者共を消し炭に変えるのに、そう時間はかからない・・・・・・」

ジャッジメントは確信する。ホワトヒートの怒りは、すでに別のものへとすり替わっている。
異端者を滅ぼす事に愉悦を見出している。この少女は、この怒りに狂った天使は、一切合切“なにもかも”無に帰してしまいたいのだ。
そのためならば何でもするだろう。たった今ジャッジメントを操ろうとしているように、自分を取り巻く全てを利用する事に躊躇しないだろう。
そう、それがたとえ我らが絶対の神、マザーパレスであろうとも。

「そんなっ・・・・そんなことは許しません!!自分の大切な後輩を、操り人形にするつもりですか!?“からっぽ”の操り人形に!!貴女のやろうとしていることは、あの娘の心を壊す事なのですよ!?そんなことは決して許されません!!」
「ノン!!これは戦争だよ、ジャジ姉。私はシングルナンバー・エンジェルとしての返答が聞きたいんだよ、感情論に振り回されるな」

悪鬼のような表情で睨みつけジャッジメントがたじろぐのを見ると、にっこりと微笑みその顔に両手をそえ、ジャッジメントの唇を奪う。
突然の出来事にジャッジメントの頭は真っ白になる。思考を立て直そうにも、口内を犯す舌と流れ込む唾液が、ジャッジメントの思考力を奪ってゆく。
プハッ、とホワイトヒートが唇を開放する。ジャッジメントは荒い呼吸を整える事もせず、互いの唇を繋ぐきらめく糸をぼんやりと見つめる。
ホワイトヒートがジャッジメントを抱きしめ、耳元で囁く。

「知ってる?みんなジャジ姉を憎んでるんだよ・・・・・・間接的にピースキーパーを死に追いやったジャジ姉を・・・・・・サウンドマスターも、アポカリプスも、みんなみんな・・・・・・大丈夫、私が守ってあげるよ・・・・今までだって私の言ったとおりにすれば、みんな上手く行ったろう?大丈夫、全て私に任せて・・・・・・ね?ジャジ姉にはもう、私だけなんだから・・・・・・」

その言葉にジャッジメントが涙を零し、きつくホワイトヒートを抱きしめ返すのを感じて、ホワイトヒートはニヤリと口元を歪めた。



















百合とか大好物ですよ、はい。

ニックネーム ある at 14:58| Comment(0) | TrackBack(1) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月20日

黙示録の日まで2

「・・・・・・調子はどう?」
「あ・・・・先輩」

白一色で統一された病室に、二人の少女の声が響く。
一つは先日、ピースキーパー・エンジェルの弔い合戦に参加し、
ただの一撃で赤の大隊を滅ぼした幼き天使、サウンドマスター・エンジェルのものだ。

「随分と・・・・・・無茶をしたらしいね・・・・」

そしてもう一つの声の持ち主。ピースキーパー・エンジェルの同期にして親友でもあった少女アポカリプス・エンジェルが、全身にチューブを付けベッドに横たわる音匠の天使に、
怪我でも我慢しているかのような悲痛な眼差しで問いかける。

「はは・・・・ちょっとはりきり過ぎちゃいました。でも成果はありましたよ。たった一発でやっつけてやりましたよ!あんなにたくさんいたのに情けない。所詮はお正月とかに一緒に過ごす相手のいない奴らの集まりですよ!」

サウンドマスターが上体を起こし、冗談めかすように笑うが、アポカリプスは先刻の表情のまま笑わない。

「・・・・・・サウンドマスター。死んだ人を悪く言うものじゃないよ・・・・・・・・」

アポカリプスが咎めると、サウンドマスターはあからさまに不愉快そうな表情になる。

「先輩・・・・本気で言ってるんですか・・・・?あいつらはピースキーパー先輩を殺したんですよ!?虫も殺せないような人だった・・・・いつだって自分の事より他の人を心配してるような人だったじゃないですか!!なんでそんなこと言うんですか?親友だったんじゃないんですか!?マザーもあいつらとの全面戦争を宣言した。もう敵なんですよ!!」
「・・・・サウンドマスター!!」

病室に沈黙が漂う。サウンドマスターは目に涙をため、肩で息をしながらアポカリプスを睨みつける。

「・・・・・・仇討ちなんかしたって、ピースキーパーは喜ばないよ・・・・・・・・」

その言葉を聞くと、サウンドマスターはそのまま泣き出してしまう。

「だって・・・・・・悔しいじゃないですか・・・・・・あいつらは先輩の言葉に耳を貸さず、伝道部隊に集中砲火を浴びせたんですよ!?絶対に許せません・・・・・・」
「・・・・きっと何か理由があったんだよ・・・・・・」
「太古戦争のことですか!?確かに昔ご先祖様たちはあいつらをたくさん殺したかもしれません。でもあいつらだって、ご先祖様たちを同じくらい殺したじゃないですか!!昔のことをいつまでも根に持って・・・・・・それともなんですか?先輩が先に攻撃したとでもいうんですか!?それこそあり得ません!!先輩の任務は教義を広める事、戦闘が目的じゃありません!!」
「・・・・落ち着きなさい、サウンドマスター」

アポカリプスの制止に、ようやく怒声が収まる。

「ごめんなさい先輩・・・・・・。先輩だって辛いはずなのに私・・・・。ピースキーパー先輩の意思を継ごうとしてる先輩に向かって・・・・・・」

──そうだ私は・・・・・・残された私は、ピースキーパーの矜持を継いでいかなくちゃいけない。
しかしそこに疑念が入る。でも・・・・それじゃあ私は、ピースキーパーが殺された事に怒ってはいけないのか?
サウンドマスターのように、弔いに身を投じてはならないのか?確かにそんなことをしても、ピースキーパーは喜びはしないだろう。
ならば私は部屋の隅で膝を抱え、ピースキーパーに訪れた理不尽な死にそっと涙をこぼしていれば良いのだろうか?
誰も悪くはないと、肩を震わせて泣いていればピースキーパーは満足なのだろうか?

───私が死んでも、ピースキーパーはそうするのだろうか─────

「・・・・・・先輩?」

サウンドマスターの声にふと我に返る。

「いや・・・・私も言い過ぎたよ・・・・・・。サウンドマスターの気持ちは痛いほど分かるよ。本当は私だって・・・・・・」

────ぞく。
私は今・・・・何を言おうとした・・・・・・?
違う・・・・・・誰も悪くなんかない・・・・・・赤の住人も・・・・・・・・サウンドマスターも、ジャッジメント様も・・・・・・私だって・・・・・・。

──ガチャ。

「随分と慈悲深いな、アポカリプス。まるで聖母マリアのようじゃないか、ええ?黙示録の天使」

突如ドアが開く音と共に浴びせられた言葉に、アポカリプスは反射的に後ろを振り返る。

「ホワイトヒート様・・・・・・」
「お、お見舞いに来て下さったんですか?そそそそんな私・・・・」
「そんなに恐縮するなって、サウンドマスター。昨日はご苦労だったね、ほれお土産だ。メロンって言って、緑の大陸のそれはもう美味しいフルーツらしいよ。今切り分けるから、みんなで食べよう。あ、ここ禁煙だっけ?」

ホワイトヒート・エンジェル。アポカリプスとサウンドマスターの大先輩だ。
いつもおちゃらけていて酒も煙草も大好物と素行に問題があったが、トップクラスの成績でエンジェル女学院を卒業している。
付き合いも長く、色々とアポカリプスたちの世話を焼いてくれた優しい先輩だったが、雰囲気がアポカリプスの知るそれとは若干だが異なる。
記憶の中のホワイトヒートとは“はまらない”。
ああそうか・・・・・・これは“怒り”だ。身を焦がすような赤の住人への怒り。

「アポカリプス・・・・・・甘いよ。サウンドマスターが正しい。奴らはもう、私達にとっては打ち倒すべき敵だ。剣を振り下ろさねばならない」
「あ・・・・ホワイトヒート様、それは・・・・・・」

ホワイトヒートがメロンを口いっぱいに頬張りながらアポカリプスを咎める。

「サウンドマスターは黙ってな。アポカリプス、それにもし今回死んだのがあんただったら・・・・・・ピースキーパーはどうしてたかな?」

ドクン。心臓が高鳴る。
──にやり・・・・・・ホワイトヒートが口元を吊り上げる。

「まぁ、仇討ちするかしないかはあんたの自由。それと裁きの天使様からことづてだよ」
「ジャッジメント様から・・・・・・」
「本日18時、大聖堂に来たれ。じゃ、伝えたから。サウンドマスターもまたねー。早く元気になれよー」

ペラペラになったメロンの皮をゴミ箱に放り込み、そのまま病室から去っていく。

「あの・・・・先輩、あんまり気にしちゃダメですよ・・・・・・?」
「あ、ああ・・・・うん・・・・・・」
「いやー、それにしてもカッコイイですよねー、ホワイトヒート様・・・・まだ心臓がドキドキしてますよぉ〜」
「は、はは・・・・・・」


揺れ動く少女に、裁きの天使は何を進言するのか・・・・・・。









ピースキーパー・エンジェルのかっちょいい日本語読みが思いつきません。
平和守護の天使とか、なんかショボくね?

ニックネーム ある at 17:58| Comment(2) | TrackBack(2) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月17日

黙示録の日まで1

────キュゥン!!

「固まれ!!離れると狙い撃ちにされるぞ!!」

太陽照りつける不毛の砂漠で、その闘争は繰り広げられていた。
かつて巨大な建造物であった瓦礫に身を隠し、上空に向かって必死に反撃する大集団。
彼らは赤の大陸の住人。歴戦の城砦が白の軍勢に攻撃されていると聞き集まった、赤の戦士達である。
その数はなんと千を超える。日々内戦に明け暮れていた彼らは、“天使”という共通の敵を見出し、今ここに集結したのである。
しかし彼らが今戦っているのは、歴戦の城砦ではなかった。

「糞・・・・・・ハエどもが・・・・・・・・・・!!」

彼らは歴戦の城砦へと向かう途中、ゴーレムの群れに襲われていた。

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「いいぞ、その調子だ。倒す事を考えるな、一ヶ所に誘導する事を優先しろ」

そこから20kmほど離れた場所で、目を閉じレモンハートと呼ばれるゴーレムに手を付け指揮を取っている女性がいた。
その傷一つ無いきめ細やかな肌を持つこの女性は、地の果てのような灼熱の砂漠とこの上なく不似合いである。

「ホワイトヒート様・・・・限界数値到達まであと30秒を切りました・・・・・・!!」
「急げ、演算も終了した・・・・・・あとは向こうが気付く前に撃つだけだ」

白いコクピットのような装置の上に立つのは、やはりこの場に不釣り合いな少女。
外見もホワイトヒートと呼ばれた女性と比べて酷く幼いが、神に慈悲を乞うように手を握り合わせ、膝をつき瞳を閉じたその姿からは必死なほどの真剣さが見て取れる。
額に暑さからではない冷や汗をかき、決死の表情で何かに精神を集中している。
その少女を取り囲むように、3体のペガサスと15体の巨大なゴーレムがそびえ立つ。
ソーサーレッグ・ペガサスと呼ばれる転移装置を備えたペガサスと、
ノックアウトと呼ばれる、戦線における補給用ゴーレムである。
宙を漂う無数の球体に、大気中から恐ろしいほどの魔力が集まる。
その凄まじさは肉眼でも視認できるほどであり、冷気を伴いながら呻りを上げる。
黒の大陸を統べる吸血鬼の一族の中でも、ひときわ魔術に長けたものが時折見せる業だ。
大気中のマナから抽出された魔力はオーロラのカーテンのように美しく見えるというが、物には限度というものがある。
15体ものゴーレムが、その全機能をフル回転させ発せられる魔力の波動は、むしろ酷く禍々しい。

「完了しました!!」
「よし・・・・・・今だ、放て!!サウンドマスター!!」

刹那、少女の体が水晶のように透き通り、ノックアウトが集めた膨大な魔力のおよそ9割以上がその身に収束する。
残り一割は3体のペガサスに振り分けられ、20kmもの距離を一瞬で転移、赤の大集団の中央に音匠の天使とともに降り立つ。
────ぎしり。
空間が軋みを上げる。
込められた魔力が、開放の言葉を待ち望む。

「な、天使!?」

突如として膨大な魔力を伴い光臨した音匠の天使に、戦士達の目が恐怖に見開かれる。

「うおおおおおおああ!!」

千を超える旅団が、一個の殺戮兵器と化しただ一人の天使に襲いかかる。

「鵯の────」

しかしもう遅い。天使の口から破滅の言葉が紡がれる。

「────ヴェンデルカノン!!」

────ガウゥン!!!!

サウンドマスター・エンジェルの鎮座した装置とその周りを漂う円盤が“吼えた”。
限界まで魔力を集めた反動により15体のノックアウトが粉々に吹き飛び、音匠の天使によって奏でられた旋律は、ソーサーレッグ・ペガサスもろとも、赤の大集団を跡形も無く消し飛ばした。

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最初に異変に気付いたのは、この赤の旅団を指揮する若き竜だった。
シングルモルトと呼ばれる“羽根付き”ゴーレムの群れ。先ほどから遥か上空から光線を放ってくるが、全くと言っていいほど当たらない。
(奴らは常に我々と一定の距離を保っている・・・・攻撃も当てる気が無いようなものばかりだ・・・・・・・・・・まさか陽動か!?)
竜が敵に真意に気付いたのも束の間、無数の瓦礫と吹き飛ぶ砂が生み出す膨大な摩擦熱、そして巨大な質量を持った“音”が彼らを跡形も無くこの世から消し去った。

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「見事なものですね。ええ?ホワイトヒート・エンジェル」

暗く広い教会の中に、皮肉めいた女性の声が響き渡る。
十字架を背に向け、跪くホワイトヒート・エンジェルを見下すように立つこの女性。
『シングルナンバーエンジェル』と呼ばれる最高位の機械生命体にして、白の大陸に築かれた単一国家ホーリー・クリスタル・エンパイアにおいて事実上最高の権威を持つ裁きの天使、ジャッジメント・エンジェルである。

「は・・・・勿体無きお言葉」

ホワイトヒートはニヤリと笑い、ジャッジメントの皮肉を柳に風と受け流す。

「歴戦の城砦に集結しつつあった千を超える大集団・・・・・・それを315機の量産型ゴーレムと3機のペガサス、そしてただ一人の天使だけで打ち滅ぼすとは。
機動力のあるシングルモルト300機で敵を翻弄しつつ攻撃範囲内に留め、15機のノックアウトにより限界まで威力を高めたサウンドマスターの爆砕音破兵器『ヴァイネン』によって敵を一掃ですか・・・・・・。
なるほど、非常に良く出来た作戦です。ものの10分足らずであれだけの戦力を消し去ったのですから、
たかが量産機18体の損失など安いもの。確かに“作戦としては”見事なものです」

「先ほどから一体何を仰られたいのですか、裁きの天使殿?」

笑みを崩さないままホワイトヒートが問い返す。

「分かっているでしょう!!」

教会内の空気が氷のように凍てつく。

「サウンドマスターのことです。彼女は優秀ですが、まだ幼いのですよ!?一度にあれほどのエネルギーを行使したのです、重い反動によって喘ぎ苦しんでいます。
今はジェネシスの管理下にある病棟で治療を受けていますが、1週間は反動が抜けないそうです。一体どう責任を取るつもりですか」
「責任も何も・・・・。ただ彼女が今回の作戦において適任だったというだけのこと。年齢は関係ありません。
それにこれは彼女の願いでもあったのですよ?彼女はピースキーパーのことを姉のように慕っていました。」

“ピースキーパー”という一語に、ジャッジメントの瞳が僅かに揺れる。

「それに貴女の言えたことでしょうか?貴女に殺されたも同然なのですよ、ピースキーパーは」

ビクッと、ジャッジメントの肩が反応する。

「貴女が伝道の任務に彼女が就くことを推薦したんだ。また時期じゃなかった。確かに貴方があの子を推薦しなかったとしても、別の天使が犠牲になったでしょう。
しかし、それでも別の未来があったかもしれないと・・・・・・期待せざるをえない」

先ほどまでの笑顔を崩し、鬼神のごとき表情で睨みつける。

「・・・・ぐしゅ」
「・・・・・・は?」

「たしかに・・・・・・っ、わ、私はあの子を推薦しました・・・・・・っ、ひっ、ぐしゅ。で、ででも、あんな・・・・・・・あんなことになるなんて・・・・えっぐ、思ってなくて・・・・・・っ」

──はぁ。思わずため息が漏れる。なんだってこの人は昔からこうなのか。
お偉い地位にいるくせに情に脆く、ちょっと責められるとすぐに泣く。
この人は“正しすぎる”のだ。優しい彼女は誰も泣く事の無い平和な未来を本気で願ってる。
──でも・・・・・・。

「分かった、分かった。つい言い過ぎたね、ごめんよジャジ姉。でもあの子が今回の“トドメ役”を望んだのは本当だし、
なにより時間が無かった。確実に完全なる勝利を呼び込むには、この方法しか無かったんだよ。
それにね、ジャジ姉。キレイ言だけじゃ、何も解決してくれない」

めそめそとしゃがみ込むジャッジメントの頭をぽんぽんと軽く撫で、法衣のポケットから煙草を取り出し、咥える。
シュボ・・・・煙草の先に自然と白い炎が点り、一瞬教会内を明るく照らすと、それは煙草の火種となって消えた。
スゥー────煙を肺一杯に吸い込む。フゥー・・・・・・。ストンとジャッジメントの隣に腰をおろし、煙草の箱をチョイと差し出す。

「もう・・・・そんなのいりません・・・・・・ぐしゅ・・・・いつからそんな風になっちゃったの?昔はお姉さん大好きって言ってくれたじゃない・・・・・・そんなものまで吸っちゃって・・・・」
「だから悪かったって。私も感情的になりすぎたよ。つーかいつの話やら、それ・・・・」

やれやれと大げさに肩をすくめてみせると、やっとジャッジメントの顔に笑顔が浮かぶ。

「まったくもう・・・・・・そうね、貴女の言うとおりかもしれません。でも、できることなら誰も傷つかない方がいいわ。異端者たちは許さない。“塵は塵に帰る”。塵である彼らは塵に帰らねばならない。でも、私達が傷ついては、あの子の弔いにならないわ」
「確かにね。でも戦争で勝利を収めるにはたくさんの対価が必要だ。
その犠牲の少ない勝利とやらを実現するために、今回のような綿密な作戦が必要だったんじゃないの?」
「はぁ・・・・もう口では貴女に敵いそうにないわ。いいでしょう、何がお望み?」

ニヤリ・・・・ホワイトヒートは思わず口元を歪める。

「そうだね、赤の住人は今ちゃくちゃくと戦列を整えつつある。本来頭一つ飛びぬけた攻撃力を誇る大陸だ、結束したときの戦闘力はハンパじゃない・・・・。」
「そうなれば打ち倒すのは不可能?」
「ノン。手立てはある」
「必要なのは?」
「火力。一切合切の有象無象を焼き尽くす、黙示録の火」

ジャッジメントが考え込むように瞳を閉じる。
10秒──30秒──教会内を沈黙が支配する。
不意に、ジャッジメントが口を開く。

「分かりました。あなたに預けます。征きなさい、白熱の天使」
「了解致しました、裁きの天使様。その名の通り、奴らを赤く染め上げてご覧に入れましょう────!!」


狂気と言う名の歯車が、軋みをあげながら回り始めた。















やっちゃったwwwwwwwwwwwwwwwwww

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